Twitterのニセ鳩山に見る情報の危機管理について

ニセ鳩山の何がマズイのか。簡単にまとめてみる。

Twitter自体の信頼性を貶める
・関係者に無駄な労力を使わせる
・政治的混乱を引き起こしかねない。
Twitterを始める本人の情報管理ができていない。

事件の経緯については、ここが非常にまとまっている。
ニセ鳩山由紀夫Twitter(Twitter)事件について速報まとめ
http://www.kotono8.com/2009/12/25nihonwokaeyou.html


Twitter自体の信頼性を貶める

Twitterをしばらくやっていると、
誤報騒ぎがあり、不明確な情報に困ることがたびたびある。
Twitterでの情報の伝播力は恐ろしいものがある。
世界を驚かせた「気球少年」がゲームに、公開から5分で一気に広がる。
http://www.narinari.com/Nd/20091012488.html


首相官邸ブログが開設されたときも、
http://ameblo.jp/kanteijp/
公式ブログがアメーバブログで開設されているという意外性から、
RTされているわりにはソースがなく、本物か偽物か、といった半信半疑のツイートが多かった。
なお当時ググったら、ソースはすぐに見つかった。
http://www.cyberagent.co.jp/news/press/2009/1104_2.html
(ただし首相官邸HP側からのリンクが見つからないため、個人的にはなんとも気持ちが悪い)


個人的にはそういった不明瞭な情報をRTする前には、
まずソースを調べるべきだと考えている。
RTするのであれば、ソースを呈示する、ソースが見つからないのであれば、ツイートしない。
そういった不明瞭な情報をRTしている時点で、
デマゴギーの拡散に協力しているという自覚は持った方がいい。
そういうと「Twitterは気軽につぶやける場所で」云々と言い出す人がいるだろうが、
アホか、いい大人が気軽にデマ流すな。
今回のも2時間で偽物であることが判明しているが、
結果としてデマとわかれば何をやってもいいわけでもない。
それは愉快犯本人もだが、RTする側も、だ。


関係者に無駄な労力を使わせる

今回であれば民主党関係者が事実確認を行うなど、無駄な労力を使わせ、混乱させている。
ありがたいことに、民主党の藤末健三議員がわざわざ確認している。

官邸報道室に確認しましたが、把握されていないそうです。 RT @d6rkaiz .@fujisue すいません、この方は本物ですか? RT @nihonwokaeyou: はじめまして鳩山です。Twitterを始めました。皆様の声を聞かせていただけると幸いです。
http://Twitter.com/fujisue/status/7024590048

また、twinaviからも

#twinavinews 【お願い】現在、鳩山首相Twitterを開始するというニュースについて、様々な憶測が飛び交っています。twinaviアカウントから正式な情報を出しますので、他のユーザーさんへもtwinaviのフォローを勧めてください。よろしくお願いします。
http://Twitter.com/twinavi/status/7023409345

と無駄な労力を使わせている。
幸運なことに今回はさほどの混乱は引き起こさなかったようだが、
悪意あるユーザーが使えば、下記のように惨事を引き起こしかねない。


政治的混乱を引き起こしかねない。

悪用しようと思えば政治的発言を行うことで、
本物と信じてフォローしている関係者に対して、政治的混乱を引き起こしかねない。
それがどこまで実現可能性が高いかは留保するとして、
実現すればデマゴギーによる情報テロと言っていいだろう。

辞職はしません。政治生命をかけて、内閣総理大臣として一生懸命、国民の期待にこたえるために一生懸命頑張らせていただきます。
http://Twitter.com/nihonwokaeyou/status/7022461766

という発言があったが、これが「やはり辞職をすべきだと思います」というpostだったら、
どんな空疎な混乱を引き起こしたかと考えるだけで恐ろしい。
いくら首相本人が失言続きとは言え、
なりしましが政治的に不用意な発言をすることは許されない。


ここまではなりすまし犯への批判となるが、
実は一番問題なのは、本人の危機管理意識なのだ。


Twitterを始める本人の情報管理ができていない。

今回の件で、一番不味かったのは実はこれだと思う。
情報発信の際の危機管理がまったくできていない。
国民の生の声、首相が「Twitter」開始へ
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091225-OYT1T00029.htm
僕が首相がTwitterを始めるという記事を読んだのは
上記12月25日00時23分 に発表された読売新聞の記事だったが、
アカウント名がないため、不用心だと思った。
はっきりいって、なりすましの愉快犯が出てくれと言っているようなものだ。
実際、見事一時間もせずになりすましが出ているわけだ。
http://Twitter.com/nihonwokaeyou/status/7021992435

もっとも、一番速い記事は24日21:35の時事ドットコム
鳩山首相、Twitter利用に意欲
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009122400954
ようだが、ここでは検討段階であることが明記されており、また

今後、首相に1日1、2回投稿してもらう方向で検討する

と非常に具体的な記事になっている。
YOMIURI ONLINEの記事は対照的に簡素なもので、
「来年1月にも〜」と時期が記載されているだけで、
本始動の準備期間として、12月現在でも開始していてもおかしくはない印象を受けた。


どうしても首相の動向となると、こういった形で情報のみが先行しがちではあるが、
アカウントをまずとってから、Twitterの利用を告知し、
その際にアカウント名を明記するのがベストだと思う。
また、開始後は(開始前でもいい)、自分の公式サイト・ブログなどでTwitterを始めた事を告知、
アカウント名を明記、アカウントへのリンクを張る作業も必須だ。
有名税」めいていやだが、
その社会的影響力を省みれば、なりすましを防ぐために最低限すべき行為だろう。


自分でも書いていて
「たかだがTwitterをするのに、ここまでしなければいけないのか?」という気がしなくもないが、
情報を発信する・コミュニケーションをとるという事は、何かしらのリスクが生じうる。
著名人、特に政治家はなりすましによりその名を悪用されないための自己防衛は、やはり必要だと思う。




最後にもうひとつ、なりすまし犯を批判すれば、
なりすましを自白した今、せめて自己紹介欄には、
偽物である旨を明記すべきだろう。
「僕は鳩山さんのファンです」というのならば、なおさらだ。
今後postするしないを問わず、それが偽物としての最低限のマナーであり、引き際だ。